合奏の練習で、見たことのない新しい曲が譜面台に載り、全員がすぐに弾き始める。そんなとき、ついていける人は、必ずしも楽譜を読むのが得意なわけではありません。初見の練習を積んでいるのです。初見演奏はどの楽器でも、何歳からでも身につきます。かかる時間も思ったより短く、初めて見る楽譜を毎日10分です。
ひとことで言うと
初見演奏とは、初めて見た楽譜を、準備なしでそのまま通して演奏することです。大切なのは全部の音を当てることではなく、拍を保ったまま先を読み続けること。身につけるには、最初の音を出す前に楽譜を決まった順番で見ること、狙いを絞った練習、そして初めて弾く易しい曲をたくさん、毎日少しずつ、の3つです。
弾く前の30秒チェック
初見の上手な人は、すぐには弾き始めません。まず30秒ほど楽譜に目を通します。順番はいつも同じにして、考えなくてもできるようになるまで繰り返しましょう。
| 見る場所 | 確認すること |
|---|---|
| 音部記号 | ト音記号、ヘ音記号、ハ音記号(アルト・テナー)のどれか。曲の途中で変わらないか。 |
| 調号 | ♯や♭がどの音に付くか。一度声に出して確かめておく。 |
| 拍子 | 4分音符、8分音符、2分音符のどれで数えるか。途中で拍子が変わらないか。 |
| テンポと曲想 | 速度記号、メトロノーム記号、表情記号。最後まで保てる速さを決める。 |
| 曲の道筋 | 反復記号、1番かっこ・2番かっこ、D.C.、コーダ。どこへ飛ぶか。 |
| いちばん難しい箇所 | 速いパッセージ、シンコペーション、臨時記号、とても高い音や低い音。頭の中で一度、指づかいを確認する。 |
初見力が上がる7つの練習
- 止まらない。メトロノームを鳴らし、何があっても最後まで通します。間違えた音はすぐ忘れられますが、止まると流れが切れてしまいます(合奏なら、全員の流れも)。初見でいちばん大切なルールです。
- 1小節先を読む。指は今の小節を弾き、目は常に次の小節を見ます。弾いている小節を紙で隠して練習すると、身につきやすくなります。
- まずリズムだけ。音の高さをつける前に、一度リズムだけを手で叩くか、声に出します(「タン・タン・タタ・タン」のように)。初見のミスの多くは、実はリズムのミスです。
- かたまりで読む。音を1つずつではなく、音階の一部、三和音、跳躍、繰り返しの音型といったかたまりで読みます。「ト長調の三和音が上がっていく」と見えれば、3つの音名を読み解く必要はありません。
- 易しい曲をたくさん。普段練習している曲より2段階やさしい曲を選びます。初見力は難しさではなく、量で伸びます。
- 毎日、初めての曲を。一度弾いた曲は、もう初見ではありません。記憶も一緒に働いてしまいます。初めて弾く楽譜を、いつも手元に用意しておきましょう。
- あとで聴き比べる。一度通して弾いたら、その曲を聴きながら楽譜を目で追います。どこで数え間違えたか、どこで違う音を弾いたか。その箇所が、明日の練習メニューになります。
1日10分の練習メニュー
| 時間 | やること |
|---|---|
| 0〜1分 | 新しい易しい曲を譜面台に置き、30秒チェック |
| 1〜2分 | リズムを叩く、または声に出す |
| 2〜4分 | メトロノームに合わせ、止まらずに1回通す |
| 4〜6分 | 聴きながら目で追い、どこがずれたか確認する |
| 6〜8分 | いちばん難しい2小節を練習する |
| 8〜10分 | もう一度通して弾く。できれば少し速く |
数週間続けると、合奏で違いに気づきます。楽譜を見失うことが減り、初めての曲でも1回目から音楽らしく聞こえるようになります。
初見練習用の楽譜の集め方
初見練習でいちばん困るのは、たいてい楽譜です。まだ弾いたことのない易しい曲が、たくさん必要になります。見つけやすい場所は次のとおりです。
- 自分の楽譜棚:昔の教本、エチュード、曲集、過去の演奏会のパート譜。長く弾いていないものなら何でも使えます。
- 所属団体の楽譜:オーケストラ、吹奏楽団、合唱団には、たいてい楽譜の保管棚があります。次の演奏会のパート譜を借りれば、本番に向けた練習にもなります。
- 著作権の切れた楽譜:古い作品は、公開の楽譜ライブラリで無料で手に入ります。
- 別の楽器のパート譜:フルートのパートをヴァイオリンで、クラリネットのパートをサックスで。移調して読めば、まったく新しい曲として使えます。
先に聴いてから弾く
7つ目の練習には、その曲の音源が必要です。ところが手持ちの楽譜には、音源がないことがほとんどです。neumascanなら、自分で用意できます。
- 印刷された楽譜を撮影するか、PDFをアップロードします。
- 再生しながら目で追います。パートがブラウザで鳴り、いま鳴っている音符が強調表示されます。
- 別の楽器用に書かれた楽譜なら、自分の楽器に移調します。クラリネット、トランペット、サックス、ホルンなどに対応しています。
- 印刷用のPDFでダウンロードします。MusicXMLやMIDIでも書き出せます。
読み取れるのは印刷された楽譜で、ベータ版としてピアノ譜、合唱譜、スコアにも対応しています。手書きの楽譜にはまだ対応していません。移調したパートの作り方は、移調早見表で説明しています。ほかの楽譜読み取りアプリとの違いは楽譜読み取りアプリの比較をご覧ください。
ヒント:スキャンした曲を、自分でも弾けるようになりたい方へ
neumascanは、曲がどう鳴るかを聴かせてくれます。あなたが正しく弾けたかどうかを確かめてくれるのが、tonestroです。ピアノ、ヴァイオリン、ギター、サックス、トランペット、フルート、クラリネットなどに対応したアプリで、マイクで演奏を聴き取り、音程とリズムが合っているかをその場で表示します。テンポを落としたり、伴奏に合わせて弾いたりもできます。大人になってから楽器を始める(再開する)方が、楽譜を読むことから演奏を楽しむことへ進むのにぴったりです。
よくある失敗
- 最初から速すぎる:いちばん難しい箇所をこなせる速さが、その曲全体のテンポです。
- 間違えるたびに戻る:それでは「止まる練習」をしていることになります。そのまま進み、箇所を覚えておいて、あとで練習しましょう。
- いつも同じ曲ばかり:暗譜してしまった曲では、鍛えているのは初見ではなく記憶です。
- 調号を忘れる:調号のF♯は曲の最後まで有効です。30秒チェックで防げます。